(京阪神エルマガジン社発行 meets連載)

其の11 未来の河童ラーメン[前編]

近、若い時みたいに爆睡できひんようになりました。若い時、そこそこのおっさんに
「歳とったらなかなか寝られへんようになるでぇ?」とよう言われましたけど、なるほどこういうことやったんかいな…
と分かった次第ですワ。わしも歳とったんやな…と実感しています。
ま、寝られへんと言うてもウルトラセブン(※1)の最終回のモロボシ-ダンみたいにうなされるほどやおまへんけど。
でも、爆睡できんと言うのは確実に歳とっとる証拠ですワ。だんだん残り少なくなる人生、起きてたほうが得ちゃうの?
生理学的にもそんなトコでしょう、歳いったら寝られへんようになる理由は。

 けどもうひとつ。まんじりともせん夜ちゅうのもありますわ、男なら誰でも。一生に一晩や二晩
まして、商売の世界に身を置く者なら金のことでも人のことでも。ラーメン屋の若いモンに、働くことの意味
働くとはどういうことやと問いかけると。十人が十人とも、どこぞの小学校の道徳の時間に習うてきたような美辞麗句に彩られた
労働は美しい的な意見をとうとうとぬかしてけつかる。「ほんならおまえ美しい労働してんのやから、汚いお金なんかいらんわなぁ。
せやったら給料いらんのう」「いや、それとこれとは別です!」
「それとこれとは別?ほんならワシの質問に上っ面だけの解答したんかい!!」ま、こんな感じになりますわ、大概。
働くことで、お金を稼ぐ。じゃ、お金があったら何ができんねん。金があったら働かんでエエンですワ。
日雇い人夫のオッサンなんかみんなそうですわね。一見、矛盾した言い回しになりますけど
働かんですむようにしようことなしに働くんですわ、オッサンらは。
ナニワ金融道で有名な故青木雄二も車行本売れて金持ちになったから、きれいな奥さんもうて、朝ゆっくり寝て
飲みたいときに酒飲んで、寝たいときに寝れるんやと言うてはりました。
氏の言うように人間なんて働きとうて働いてるヤツなんて一人もおらんはずですワ。
趣味で仕事してるヤツおりますけどそれこそ、金があるからできるモノダネのはずです。

 時間と金の関係。今の一円と百年後の一億円(※2)やったら間違いなく今の一円の方が値打ちがある。
このことを分からんと何やっても成功しまへん。現在の人類の社会では人の人生とは時間との戦いに他なりません。
ほんならその時間とは?もっと具体的に言うと、己の寿命ですワ。
ハジメ人間ギャートルズはマンモス、サーベルタイガー、自然との戦いですけど。
学校で教えなならん労働の究極的目的、意味合いは、“効率よく働くことで人生の残り時間を自分のものにすること”ですワ。
仕事、労働、体力、勉強、金、人生、時間。加うるにラーメンを創ること。これらの相克的とも言うべき関係。
これがワシの河童ラーメン業における経済の原則です。

 河童ラーメンの未来とワシの人生の目的は必ずしも同じ所にはありません。
河童ラーメンという器に何を入れるかはワシが決めるんではなくお客さんやうちの連中、ひいては社会が決めるもんやと思います。
ワシにしたって、いつまでも河童なんかにかまけていては、あっという間に年寄りです。
早よう一人前のブランドにして、世の中に放置したらんとあきまへん。
そんなこと言うてたらアンタまだまだ若いのに!と人生の先達にお叱り受けそうですけど、河童と心中するつもりは毛頭ありまへん。
そんなこと考えてたら、河童ラーメンがかわいそうだす。ワシの人生、いろんなことを楽しむには
そろそろ下準備(※3)にかからんならん季節に差し掛かってきました。せいぜい、カラダが言うこときく間にてんこもせなならんし。
河童ラーメンが一人の人格として大阪にひとり立ちするには今しぼらくの時が必要ですけど
ワシの当面の目標はそれぐらいのもんです。けして、子孫に美田を残そうなんて考えてまへん。
 なら、人生の目的は、ワシの人生の目的は?若いときみたいにもう一回爆睡してみたい。こんなとこですかいな。
続く


※1 史上最大の侵略、前編後編ですわ。今回“続く”と書きたかったので無理やりこじつけでネタにしたようなモンで…。
※2 なんやアメリカの不動産会社が月の所有極分譲してるらしいけど。
   お月さんお前にやる言われてもどないもできまへんし、金にもなりまへんわな。
   それといっしょで、百年モンの一億円の手形もらうより一円の現金のが値打ちあるの誰でも分かりそうなです。
   けど、時間の概念はずしたら意外とみんな分かっとらん。経済は具体的に考えんとあかんのですワ。
※3 アタマ、結構禿げてきました。小さいときから禿げたらどうしようと思ってましたんで。
   で、禿げてきたのを  に次のことを具体的に考えていこうと思い立ちました。
   毛のあるヤツはいつまで仕事して夢を追いかけてたらよろし。
※4 ワシらのような零綱事業者が陥りがちなことですが、家業芸々跡取りの問題と自分の人生の問題と
   一緒くたにしてしもうてることがま   まある。承継せしめるべき伝統工芸なんかは息子が継ぐほかに
   選択がなかった時代もありましたやろうけど。最近は悲しいかなそうはいかん。変化を懐深く受け入れることが大事で、
   嘆くばっかしではあかん、ちゅうこっすワ。罰すれば通ずではなく、罰すれぱ変じ、変ずれに通ず、なんですな。


ラーメン資本論
其の1カツオブシとF1
其の2 "守・破・離"
其の3 売れたモンがうまいモン
其の4 食べもんとしてのバランスを欠いたらアカン。
其の5 ん?誰にでもできるこっちゃあらへん…。
其の6 たかが製麺、されど製麺。
其の7 河童ラーメンはチェーン店か否か。
其の8 飲食に関しては客もプロやということや。
其の9 ネットとうまいモン。
其の10 ココロの原風景はどこにあるか
其の11 未来の河童ラーメン[前編]
其の12 ラーメン屋のおっさんなんて…ラララ【最終回】