(京阪神エルマガジン社発行 meets連載)

其の8 飲食に関しては客もプロやということや。

“食”に携わる商いをするということ。
そして、そのお客様はすべてプロフェッショナルだということ。
食べモンを売る商売をするのなら、そう思うて商わんとあきまへん.

すべての人間は、いや生物に食べることによって生命活動を維持してます。
食べなければ死んでしまうという事実。
誤解を恐れずに言えば、ワシは、このことをもって飲食業のお客さんはすべて
プロフェッショナルやと断じてるんですワ。
生物の生命維持の為の捕食活助、即ち“食べる”という行動の前には個人的、嗜
好的なウマイマズイなどということは実はたいした意味を持ち得まへん。
まずは、生命体に必要な養分なリビタミンなりミネラルなりが含まれている食物であるか否かが大事ですワ。
もちろん動物たちとて食物連鎖の法則に従い、大自黙から与えられ獲物や木の実・穀物など
をそれなりに美味と思って(?)
食べているのでしょうが、やはり人間ほどは、当たり前のことではありますが、味の嗜好性に深い意味を
持つことはありますまい。
まして食文化的意味合いなどは申すまでも無く持ち合わせてはおまへん。遥か有史以前の太古、
人間が火を自由に扱えるようになった日から、やがて農薬や牧畜を広め、
それに合わせた調理技術の発揮と共に、生命維持活動の一環である食べるという行為を“食文化”
にまで高めたということはやはり畜生とヒトとの大いなる差でありましょう。

昔、近所(※1)のおつさんが、「衣食住に携わる商売しとったら、食いっぱぐれあらへんのや。
衣食住は人間の生活で最低限必要なもんや。せやから、これを商いの糧にしたら間違いないんやで!」
とよう言うてました。
要するに昔の人曰く、人生、それなりに波風たてんと生きるんやったら公務員になるか堅実な商売せぇ、
ちゅうこってすわ。そのおっさん、たぶん日雇い労働者やったけど。
でも堅実な商売、食いっぱぐれはないけど、それはそれなりに難しいもんです。
いや、現代に到ってはそんな安易な考えで食べモン屋を始めたら間違いなく失敗しますわな。
そこいららはやはり昔と違うんやと思います。
「人生やり直しができるたら、なんやら…』外野(※2)の人間に限ってウソぶきますけど、
正味のとこ商売に失敗したら地獄ですワ。
戸棚一枚の下、地獄が待っているのが商売です。
そんな中で、食べモン屋としての気持ちを持つということは、
自分の商い対しての確固たる裏付けを持つことでもあります。
ワシのやってる〔河童ラーメン本舗〕は、生活だけできたらええ的な昔の選択の上での食ベモン
商売とは一線を隔します。
やっぱり、本気でそこに骨を埋めるくらいの腹のくくり方をもって商いに臨まんと。
それでやっとスタートラインですわ。そやから”お客さん”についても自分なりにしっかりした
厳しい定義付けを持っておかんとあかんのですわ。
最初のお題に戻りますが、私らのお客さんは食べることのプロですわ。
ちょっと唐突で無茶な理屈をこねてみましたが。
要するに無理やりこじつけた屁理屈で何を言いたいかと申しますと…
相手はプロゆえ商うのが難しい、ゆえに食べモン屋は厳しい商売でっせーとそんな
ウンチクを言うつもりとちゃいます。
もちろん、そのことはお伝えしたいことの一部ではありますけど。
でもそんな浅いことを言いたいが為にここまでネタ振りしたわけでにありません。
長い目でみれば、相手がプロだからこそ、我々のやっている素直な努力が正しく評価されるのだということ。
この一点(※3)につきます。生きるために食べる、その為に縣命に食を提供することの行為を時には
厳しく叱責してくれ、そして最後には認めてくれる。そんな、人間という"プロフェッショナル”
なお客様に、真に深い意味で生かされているのが我々食べモン屋なのです。
  

※1 ワシ等が小さい時、公園で野球してたらどこからともなくおっさんが現れ、
   しかもいつの間にかバッターボックスに立って、またマウンドに立ったりしたもんです。
   平日やのに。近所のアパートに住んでるらしいことはわかってるんやけど、どこの誰かは知らない。
   しかし今風に言う怪しい人物などではなく、エエおっちゃんやった。
   こんな経験、ワシらの年代の下町生まれには、多々あったことやと思います。
※2 人づてに聞いたことで、さもそれらしい物言いするヤツほど悪いヤツはお
   らんとワシは常々思うてます。さっきのおっちゃんくらいやったら、まだええんやけど。
   ほんまにそれらしい根拠のないエセ知識で人に物言うヤツがおる。そんなやつに限って自分が人を
   惑わしてることを自覚しとらん。
   確信犯の詐欺師より始末に負えん。皆さんもそれらしい物言いには気をつけたほうがよろし。
※3 この点を肝に銘じておけば、食いぱっぐれまへんわ。ここまで腹くくったら、
   衣食住にまつわる商売でのうても成功します。ようはまじめに、
   素直にやることは口で言うほど簡単やないちゅうことです。


ラーメン資本論
其の1カツオブシとF1
其の2 "守・破・離"
其の3 売れたモンがうまいモン
其の4 食べもんとしてのバランスを欠いたらアカン。
其の5 ん?誰にでもできるこっちゃあらへん…。
其の6 たかが製麺、されど製麺。
其の7 河童ラーメンはチェーン店か否か。
其の8 飲食に関しては客もプロやということや。
其の9 ネットとうまいモン。
其の10 ココロの原風景はどこにあるか
其の11 未来の河童ラーメン[前編]
其の12 ラーメン屋のおっさんなんて…ラララ【最終回】