(京阪神エルマガジン社発行 meets連載)

其の5 ん?誰にでもできるこっちゃあらへん…。

成9年の11月くらいやったかな、ちょうど河童を始めた時によく言われ
たことがありました。「兄ちゃん、こんな脂っぽいラーメン(※1)食われへんがな」「なんやお前とこのラーメン?こんな物、よう売るの?」「大阪の口肥えた人はこんなん食わんで」始めて数ヶ月はこのようなお客様の評価が続きました。けど、商売と言うものは面白いもので、悪評をいただいたお客様ほど一年後には河童の常連になってくれました。氷山の一角でしかないこのことから類推するのはちょっと乱暴やけど、この事実は何を表すのでしょうな?これをワシなりの分析で答えるとこういうことですわ。

まずいラーメン屈→当然流行らず→閉店。こう思っている近所のお客さんは半年たってもつぶれない河童に興味を持ち始めます。何でこんなまずいラーメン屋つぶれへんのやろ?
そうこうしている内に試しにもいっぺん食うてもええかなと思い立ち、店に入ると思いのほか客もいてる。食うてみたら思ったより脂っぽくな
くなってる。それどころかなかなかいけるやん!?え?っ、こんな味やったっけな?要するにむちゃくちゃネガティヴな印象を持っているお客さんやからこそ、意外といける味やったんや!になるわけですわ。当然、急に味が変わって特別美味しくなったわけやありまへん。そんなこんなで、気がついたら背脂の甘みのないラーメンは物たりんようになる。河童ファン一丁上がりですわ。

河童は基本的にはこういうお客様に支えられています。これが前にも言いましたが100人のうちの5人に徹底的に支持してもらうということですな。ドラスチックな言い方ですが他の95人はうちのお客様になってもらわんでもかまわんのですわ。

ラーメン屋は始めから流行るより時間をかけてコアなお客様(※2)と繋がっていく。
これが理想的です。が、大きな問題がひとつあります。もうお分かりだとは思いますが、お客さんがつくまでは赤字が続く(※3)ということです。大げさな言い方になりますが血を流しながら歩く、つらいつらい道、しかもそれは、いつ抜けるともわからない長い長?い、トンネルなわけですな。

「ケケちゃん、どーやればラーメン屋でうまいこといくの?」よく友達にきかれます。

「3年間赤字でも我慢できるか?それやったら何とかモノになるんとちゃうかな。ただし保証、確証の類は一切あれへんで。ワシの勝手な考えやさかいにナ。あそうそう、ラーメンの味、できるだけとがったモンで、しかもあんまりうまいうまい言うてもらえへんほうがええな」

「そんなんあかんわ、むちゃくちゃやがな。誰にでもでけるこっちゃあらへんがな」

皆さん、この話どう思います?けど食べモン屋で成功するにはこの条件だけでエエと思います。ようするにどーすればうまいこといくかの
答えは、まずお金ありき。ちょっとした料理のセンス。以上、ですわ。
ま、極端な話、お月さんにある食材使うてなんちゃらかんちゃらして作ったら上手いこといきます言うてもそんなん実際にはできまへん。けどワシの言うてることは物理的にできることですわ。
世の中で実行可能なことですわ。やったらできます。
けどあんまり実行する人はいてまへん。

ひょっとしたら、ワシの友達の言うように、「誰にでもできるこっちゃあらへん」のかも知れません。たかがそれだけの差、されどこれが彼我の差なんでしょうな?。

※1河童ラーメンは脂っこいって言われますけど“油っこい”のとは似て非なるもんです!ラーメンはやっぱり力強い
  食べモンでなければ。"淡い”のはあきまへん。まして“うすい”のは問題外。
  カロリーの問題はおいといて“濃い”モン食べたい時に河童ですな。
※2今も昔も?通な人やと思います。ありがたいことですな。人生の達人、これ即ち食通。お客さん!!
  河童も日々、進化・深化してまっせ。
※3赤字が続く…。真綿で首を絞められるようなジリジリした嫌な感覚。喉をかきむしるような焦燥感。
  経営に携わった人なら多かれ少なかれ経験ある感情。
  3年も赤字続いたらいんでまいます。赤字の赤は血の赤かもしれません。
※4あえて紙一枚の差のように書きましたが、それは永遠に埋められることのない決定的な差でもあります。
  マズローの欲求段階説における、最終段階の自己実現とは当にこの部分。自分を信じての見切り発車。あなたは出来ますか?


ラーメン資本論
其の1カツオブシとF1
其の2 "守・破・離"
其の3 売れたモンがうまいモン
其の4 食べもんとしてのバランスを欠いたらアカン。
其の5 ん?誰にでもできるこっちゃあらへん…。
其の6 たかが製麺、されど製麺。
其の7 河童ラーメンはチェーン店か否か。
其の8 飲食に関しては客もプロやということや。
其の9 ネットとうまいモン。
其の10 ココロの原風景はどこにあるか
其の11 未来の河童ラーメン[前編]
其の12 ラーメン屋のおっさんなんて…ラララ【最終回】