(京阪神エルマガジン社発行 meets連載)

其の4 食べもんとしてのバランスを欠いたらアカン。

100人のうち、何人がおいしい思たら商いが成り立つか?確かこんな問いかけで先月締めたと思います。さてさて、何人やと思います?

答え。(あくまでワシの持論の範疇での答えです)ワシは、同じモン100人に食うてもうて少なくとも「ほんまにうまいわこれ!!」と言うてくれる人、10人おったら食べモン屋として勝負できると思てます。予想したよりかなり少ない答えとちゃいますか。割合で言うたら、約1割ですな。

おそらく皆さんは、100人のうちやったら60人とか80人とか思いはったんやなかろうか。けど、よう考えてみなはれ。そんなけの人がうまいと思うもんそんなにあるやろか?やれトマトが嫌いやの豆腐は好かんだの、もひとつやねん魚介類、生モンあかんねん、キモは歯ごたえない、ホルモンようかまんねん…。嫌いなモンも人それぞれなら、その理由もマチマチですわ。

せやけど一方では、好きなモンやったらわざわざ遠くまで時間や金をかけてでも食いに行く。先月号のネタにした名物でも、こんなモミナイもん土産に買うてこいっちゅうけったいな人もおる。わけですなー

要するに人それぞれなんですわ。服装や異性の好みと一緒で。

飲食業のことで、もっともらしく「おいしいもん作ったら売れるで、安くてエエもんやったら売れるで」としたり顔で言う人おりますけど、そんなん当たり前やし、当たり前のことだけしてたら我々零細企業は儲かりまへん。そんなことは大手の食品会社にまかしといたらヨロシ。それよりもっと大事なことはトガったもん作って人の心に突き刺さるような印象を与えられるか。その一点に尽きると思います。けど、トンガったモンいうても食べもんとしてのバランスを欠いたらアカンのです。うまいマズイは万人ヒトそれぞれですがバランスのよさは万人共通です。
ちょっと強引かもしれんけど。

河童ラーメンは背脂系しょう油ラーメンでは大阪でも“はしり”です。そして、今の店で出しているラーメンは、一番最初に出していたラーメンとはかなり違ってきてます。今風の言葉で言うたらヴァージョンアップですわ。どういうことかといいますと、もっとおいしくしたれと、欲深くとがった部分(※1)を研ぎますわな。そうするとおいしくなくなるんですわ。バランス崩れたんが原因です。で、バランスをとる為に食材を一から考える。一通り満足するまで手を入れたら今度はとんがった部分がボケてきよる。ほんならまた一から…。これの繰り返しです。けど、あほなことやってるようであれやこれや繰り返しているうち、もちろんこんなことしてたらお客さんにも迷惑かけてるんですけど、ラーメン自体が“洗練”されてきます。極まってくる言うたらええんやろか、キワキワまでバランスが取れてるのに一発のパンチ(※2)もある。そんな風になってきよるんですわ。

最近の河童、かなりイケてる(※3)と思うんは贔屓目やろか??

そんなこんなと考えていると、今度は背脂しょう油ラーメン以外のラーメンもうまいもんつくったろやないかいな…とよこしまな気分になってきたわけですなー時は10月9日(祝!体育の日)。米国村店にて、河童のスーパー・ラーメン職人であるとんこつ一家親分が、なんか魚や塩使ってそらおいしいラーメンを作ると息巻いています。


※1 たとえぱ背脂の調理の仕方を手の込んだものにしてみると。おとなしなりすぎて、
   野趣溢れる前の方がよかった…、なんてことになります。
※2  豚骨などの獣肉系スープは65℃から70℃までがおいしさのストライクゾーンです。
   これ以上沸かすと風味・旨みとも飛んでしまいます。
   この鉄則はどんな料理といささかも変わりまへん。けれどラーメンはやはりパンチがないとあきまへん。
   ラーメンを食いにくるお客さんは、やっぱリ熱々のラーメンを求めてます。
   ぬるいけどおいしいラーメンは存在し得ない。
   料理のセオリーとは相容れない部分を最も持つ国民食、それがラーメンです。
※3 ちょっと前から醤油変えました。醤油を作るのに塩を使いますが、塩の代わりに
   醤油を使って作った醤油を使ってます。やっぱり違います。背脂系しょうゆラーメン
   ゆえ醤油には重きをおきたいのですがバランスの面で試行錯誤の繰り返し。
   やっとイケてる醤由ゲット//


ラーメン資本論
其の1カツオブシとF1
其の2 "守・破・離"
其の3 売れたモンがうまいモン
其の4 食べもんとしてのバランスを欠いたらアカン。
其の5 ん?誰にでもできるこっちゃあらへん…。
其の6 たかが製麺、されど製麺。
其の7 河童ラーメンはチェーン店か否か。
其の8 飲食に関しては客もプロやということや。
其の9 ネットとうまいモン。
其の10 ココロの原風景はどこにあるか
其の11 未来の河童ラーメン[前編]
其の12 ラーメン屋のおっさんなんて…ラララ【最終回】