(京阪神エルマガジン社発行 meets連載)

其の2 "守・破・離"

っちの料理ショーにでてくるラーメン店主の連中はスタンダードな自分的絶対基準のラーメンを世に問うて成功を収めてきた。それがラーメンを"創る"ちゅうことですわ。経済的に成り立つことこそ、自分のラーメンを世に問うたことになる…。そろそろお分かりですやろ。経済社会に自分の場を持つ!これ、これですわ、モノを創るっちゅうのの本質は。(*1)

だから超高級食材をふんだんに使ったラーメンは“作る”のであって“創る”のではありません。確かに、それは創作ラーメンとは言えまっけど…。料理単品だけを見ると、作り手の素晴らしい感性や想像力が一杯の鉢に凝縮されてます。が、それは、やはり単に旨いラーメンを作るということにとどまっていると思いますな。テレビを見てて、あえて達人たちのお遊び(*2)と断言しますが。テレビ局のスタジオで作ったもんはあくまでお遊び創作ラーメンです。そんなん本気で売る気のあるヤツおりまへんわ。あんなん売ったら大損です。で、難儀なんは最近の若いヤツ、そこを勘違いしてるんですわ。要するに、それを彼らの真髄だと思てる若いヤツがおるちゅうこってす。うちで働いてもすぐ新しい創作ラーメンを提案して作りたがるヤツがおります。それで世間に認めてもうて、ゆくゆくは独立してポルシェやフェラーリ(*3)に乗ろうと夢見てる。夢を持つのは覆いに結構なことやけど…。

けどな?、勘違いしてる若いヤツ。うちで働くんやったらまずうちのラーメンをしっかり作ってもらわんといかん。そこからですわ。アンタらの創作ラーメンを世に問うのは…で、勘違いせんとって欲しいんは、ワシは社員が独立するの反対やとかそんなキン玉の小さい事言うてんのとちゃいます。修業なんかせんでも、美味しいラーメンは誰でも作れます。(*4)でも商繋的に成功するのにはいろんな要素があります。わしの言う修業は、味はもちろん経済的なことも盗んでいかんかいいうことですわ。世の経営者はたいがい初めっからその世界で勝負してます。どっかのラーメン屋で楽チンに修業してあわよくば早めに独立してエエ目見よ…、こんな考えのやつ初めっから勝負になりまへん。こんなヤツに限って「ラーメンの勉強はします」と大声上げていいまっけど、なんもしとらん。ラーメン作るくらいの知識なら小・中学校で習たもんで十分ですわ。しかし、それさえも怠けとる。そんなんあっかい!!ラーメンの世界でも、大将、店長の言うこと聞かんヤツ、守ることのでけんやつばっかりですわ。キラ星の如ぐ輝くスターに勝つには、守って守って守り抜くことのできたドン亀(*5)こそがふさわしいと思うんは甘いかもしらんが、そんなバカを育てるのも、またワシの元から巣立たせるんもラーメンを創る、場を立てるということですわ。要は、勝たんといかん商売で!これを叩き込んだらんとアカンのですわ。

茶道、能、剣道などで言う、“守・破・離”(しゅ・は・り・)基本を守って守って守りきった後にその殻を破り、己の行く通を見抱え、そしてついには師と袂を別ち、新たな道を歩み始める…、大まかにはこんなところやと思います。かの千利体が言った言葉ですが、ラーメン道においてもこの言葉なかなか含蓄深いもんがあります。文化的に見て、茶の湯とラーメン。どっか似てないやろか。ま、こじつけはええとして似てることがあるとしたら、千利休も欲深いあほな弟子をかかえて、苦労したことよろな。

ということで、自家製麺を始めたのと同時に、思い切って弟子達自慢の1杯を、お客様に披露すんのも逆転の発想かなと…。やはりそれは経済的に成り立つものでありながらも、百人の中に一人だけでもおいしいといって下さる方がいるんやないか…またそうであれば、未来のラーメンが見えてくるんやないか、という思いからですわ。名付けて河童・新ラーメンプロジェクト。値段も皆さんに決めてもらうくらいで考えてます。詳細は次号、ご期待あれ。


*1 適正な値段で商品を提供し続ける。時間軸に沿って商品を***分すること。
*2 あないして作ったモン、贅沢でうまいやろな?。プロダクションモデルとしてはイケてないとなりますわ。
*3 スーパーカー乗ったらモテると思うその気持ちがすでにインケツです。アホなヤツほど遊びで商売につなげようと無意識に考えとる。彼我の差、ここに在りですわ。
*4 美味しいラーメンは誰でも作れます。うちのアルバイトでも作ってます。
*5 最近、堀ちえみのシュッチャーデス物語みたいなんがテレビでやってました。それだけです。
*6 製造、難しいですな。けど、今、自家製麺と向きあわんと自分の人生に大きな荷物積み忘れることになると思い決意しました。


ラーメン資本論
其の1カツオブシとF1
其の2 "守・破・離"
其の3 売れたモンがうまいモン
其の4 食べもんとしてのバランスを欠いたらアカン。
其の5 ん?誰にでもできるこっちゃあらへん…。
其の6 たかが製麺、されど製麺。
其の7 河童ラーメンはチェーン店か否か。
其の8 飲食に関しては客もプロやということや。
其の9 ネットとうまいモン。
其の10 ココロの原風景はどこにあるか
其の11 未来の河童ラーメン[前編]
其の12 ラーメン屋のおっさんなんて…ラララ【最終回】